興居島。ごごしまと読む。パソコンの変換では出てこない漢字である。ましてや、高校時代、「お前は日本人かぁ」と恩師に怒られた私には書けない漢字である。夏目漱石の小説「坊ちゃん」では、マドンナにちなんだターナー島の沖合いに浮かぶ島である。
フェリーで13分で着くこの島は、行政区分では松山になるが、生活文化は変わる。
島で買い求めた昼食場所を探して、数十分車を走らせていると、小さな港のある集落で作業をしている人たちを見かけた。テングサ干しである。これからのトコロテン、もしくは寒天の原料と言えば理解してもらえると思う。採ったテングサを干すだけではない。大量生産の工場で作られるものではない。まず、何段階もの真水で池で塩抜きや汚れを取る作業が行われる。茶系のテングサが白く変わる。その後、天日で干される。その後が、圧巻である。干したテングサに付いている貝類などの不純物を手作業で取り除けられるのだ。ちまたの漂白された真っ白い寒天とはわけが違う。大量生産のものではない。手作業でゴムとんかちを使って叩かれ取り除かれていくのだ。
ここのテングサは自然食材のブームに必要とされるものであり、高い値段で取引されているのを感じる。
そこで働く人たちの顔はあかるい。自分の仕事に誇りを持っている。
カメラを持って近づくと、「新聞社の人かい。」と声がかかった。
「いえ、インターネットで写真を公開しているものです。」私は言った。
理解は早かった。かなりの人生経験を積まれた方と思われたが、ブログをご存知であった。
ごみを取り除いていた人たちから声がかかる。
「こいつは、指名手配中だから、特ダネになる。こいつの写真を撮ってくれ。」
言われた人は、まんざらではない、はにかんだ笑顔で黙々と仕事をこなしていく。
最近、グルメブログに写真を載せることにはまっているカミサンがご主人と思われる方と話を始めた。寒天つくりのレシペの聞き取りである。
しばらくすると、缶コーヒーとテングサを手に戻ってきた。貰ったという。
12時のサイレンがなった。昼の休みである。ご主人は本業は自然薯販売という。その作業場に働いている人たちは昼食のため移動である。
さそわれた。「自然薯の作業場、写真に撮っていかないか」と。